鯵
普段はめったに食べない鯵の開きを出された。ひものは食べるが鯵の開きは買ってまでしては食べないので、珍しい! から、何であるの? になり、どうせ貰い物だな!? に三段活用は早い。ひものと言えばムロアジのひものに限る。我が家ばかりか隣近所どこに聞いても、ひものはムロアジである。仮に、ひもののお使いを頼まれて鯵の開きを買ってくると、ひものも知らねえのかと言われるのが落ちである。いつだったか都会に住む伯母に色々混ざったひものセットを送ったら、鯵なんて余計なものはいらないからムロだけでいいのにと文句を言われたが、そりゃそうだよなと妙に納得してしまった。そのひものだってどこの店屋のものでも好いと言うわけではない。唯一こだわるとすれば天日干しか機会乾燥かは外せない。勿論、不潔だのなんだのと言われても天日干しに限る。だから大手ひもの屋の機械乾燥物はまず買わないから、この時期、この梅雨時はひものを食べる回数が減る。
でもって、誰に貰ったの? と聞くと、近所のお婆さんに貰ったのだと言う。あそこのお婿さんはムロよりも鯵が好きなんだって、こっちの出じゃないからね、と焼いたものをまた一枚皿に載せる。やっぱり都会育ちは鯵が好いのかねえ、と半身を口に入れる。
「おっ、美味い、美味いよ。久々に食うと美味いもんだねえ」
「そうだよ、鯵だって馬鹿にはできないよ。たまに食べるのもいいもんだよ」
「いや、鯵の方が高価なんじゃないの?」
「買ったことないから判らないよ」
そんな短い会話をしながらペロリと食べて、
「やっぱりムロだな。ひものはムロの方が美味いな。鯵は刺身、刺身が一番美味い」
とまあ、上げられたり下げられたり、鯵という魚はひものにしかならないムロアジと違い実に奥が深い。
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