嬉しかった
行けば彼は、車椅子に座ってパソコンの前に居た。痩せ細った顔が振り向いて笑う。
「どうした?」
「何が?」
「だってお前、足し算もできなかったじゃねえか!」
「もう大丈夫」
「大丈夫って、お前・・・」
私はただ唖然とするばかりだった。
「先生にも注意されるくらい努力して、少しだけ杖で歩けるようになったんだよ」
と傍で連れが言う。
「そうかあ・・・」
と言いながら、以前とは違うその顔の意志を私はしっかりと感じ取っていた。
「〇ちゃんに見せたかったのよ」
と言う彼女に、
「うるせえ、早くお茶を入れてこい!」
と以前の彼が言う。
素直に嬉しかった。そして、自分の怠惰を思い知らされて情けなくもあった。人間の底力と、努力の素晴らしさが、夕暮れの対向車のライトをいつになく眩しくてさせて仕方がなかった。



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